★はじめに
ある現場でのミーティングで、お客さまより突拍子もない問題提起をされたことがあります。
その時、あるエンジニアから「A案にしてはどうでしょう?」と意見が上がりました。
私も良さげかなと思いましたが、同席していた技術に長けたエンジニアがB案が良いと意見しました。
参加者は「なぜB案?、A案の方がシンプルで良さそうだけど。。。」といった声も上がりましたが、このエンジニアはシステムの今後のことを考え、ベースはA案としつつ、可用性、信頼性、保守性などに優れたB案について懇切丁寧に説明して下さり、全員納得した上でBの方針となりました。
ミーティングの場では、決定権を持つ方に対する緊張感からか、A案以上の考えを出せず、それに同調することが最善と思っていました。
しかし、後々考えてみればB案は自分の中でも出せる案であったにもかかわらず、それをミーティングの場で出すことはできていませんでした。
時間の限られているミーティングの場において、正確で誠実な意見が重要となりますし、かつそれができるエンジニアは重宝されます。
今回はワンワードというゲームを行い、その場に最も適した意見を素早く出せる訓練をしてみたいと思います。
★目的
ミーティングなど、限られた時間におけるコミュニケーションロスを発生させないことは重要である。
自身の発言をスピーディ、かつその場に順応させる為、即興性(インプロヴィゼーション(Improvisation))を身に着け、柔軟かつ正確で誠実な対応ができるようにする。
★最短でプロエンジニアを育成する事への効果
・失敗を楽しむ。失敗を怖がらず、自分自身の意見を自然に出す(結果、それが間違っていれば振り返ることで学びになることを学ぶ)
・楽しく自然に。無理をして「上手にやろう」「頑張って考えよう」ではなく、何度も繰り返して「自然で正確でいい感じ」が出せることを目指す
・スポンテイニアス(Spontaneous)。正確な内容が自然に浮かんでくるよう、自身の本質的な考え方をより誠実で正確なものに昇華させる。
上記より、その場に最も適した発言を自然に出すことができるエンジニアを育て、最善で最速な動きができるようにする
★具体的な進め方
■ルール
・テーマを決めて、一人一ワードずつ発言し、物語を作っていく
・無理をして上手にやる、笑いを取る為に面白くする、はまずは考えない。思うまま即興で。後に振り返って誠実であったか確認する。
・基本時計回り
・そこまで厳密にこだわらない(1文節くらいはOKとする)、あくまでも即興性を重視
・1回当たり7、8分程度。
・マネージャー1名は書記
■時間配分
7、8分×5回で40分程度
1回毎に1、2分の振り返り(すぐに発言できたか、場に順応した正確な内容だったかなど)
===== 実施結果 =====
チームメンバ3人とマネージャー3人の計6名で実施してみました。
所感としては、かなり盛り上がり、笑いの絶えない時間だったと思います。
最初の方は、やはりとまどいからか「スッ」とはワードが出てこず、発言まで数秒要してしまったり、文脈がおかしかったりと、きれいな文章にはなりませんでしたが、回を重ねていくうちに、発言までのスピードがアップし、また文脈も徐々に正しいものへと変わっていきました。
1回毎に振り返りを行い、メンバの意見を聞いてみると、、、
・前の発言が自分の予想していたものと違った為、すぐに発言できなかった。
・次に正しくつなげようと頭で考えてしまう為、自身の発言に時間がかかった。
・間違えないようにと考えてしまっていた。
・接続詞など簡単なワードに逃げてしまっていた。
などがありました。
ただ、後半の振り返りでは、、、
・たまに機転の利いたワードが出るようになった。
・みんなとワイワイやって打ち解けたからなのか、失敗を恐れなくなり、発言がしやすくなった。
・発言の瞬間の発想に不安を持っていたが、後で考えてみたらその場に順応した意見であり、少し自信がついた。
と、皆それぞれ効果を実感していました。
このグループワークでは、短い時間でチームの結束力が上がり、良い意味で遠慮しない発言ができる関係性を築けたと思っています。
また、各自の課題として知見の量が不足していたことも露見し、知識があれば、より早く、より正確で誠実な意見を出せる確率が上がるということもわかりました。
今後現場でこのスキルを活かす為、まずは意見を求められる場に居合わせたら、実際の発言ができなくとも頭の中に即興で発言をするよう練習をし、後で振り返り、正確で誠実な意見かを振り返ってもらうようにしました。
これを繰り返すことで、正確で誠実な意見を出せるようになるので、皆に実施していってもらおうと考えています。
最後になりますが、どんな失敗も必ず「成功への糧」になります。
間違えれば、怒られたり、文句を言われたりして、怖くなるかもしれません。
でもそれは、逆に自分が成長する為の大きなチャンスです。
ガックリするのは数分で、後は次失敗しないようどうするか考えてみましょう。
何度も何度も繰り返せば、それはきっと皆さんのチカラになります。
失敗を恐れずに!